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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
 そのため、金を作る手段として自分を女衒に売ったのである。吉原の半籬三國屋に部屋持ち女郎として抱えられたが、京屋市兵衛が身請けするという形でお彩を苦界から救い出してくれた。その折、実に二年ぶりに市兵衛と身体を重ねた。しかも、女郎屋の遊女と客という形で―。それは切ない束の間の逢瀬であった。
 市兵衛の指の動き一つ一つを、お彩の身体は憶えていた。市兵衛のこれまでの愛撫は女体を知り尽くした実に巧みなものであった。だが、あのときは違った。手練手管よりもお彩を壊れ物のように扱う気遣い―優しさ、丁寧さを感じた。口づけにさえ、どれほどの心がこもっているのかと思うほどだった。
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