この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
町人町の京屋に着いたお彩は、まず裏口から訪い(おとな)を告げた。京屋には現在、先代市兵衛の妹に当たるお知(ち)歩(ほ)という女が居候していると聞く。お知歩は五十過ぎで、同業の武蔵屋という呉服太物問屋に嫁ぎ、良人との間に二男二女を儲けた。実はその末娘のお佐歩を当代の市兵衛の後添えにと目論んでいたのだ。
ところが、市兵衛がお彩を継妻として迎えたため、お彩や市兵衛には良い感情は抱いていなかった。良人の武蔵屋徳右衛門というのは大人しい男だが、お知歩は亭主を尻に敷いて、武蔵屋でもしたい放題のやりたい放題で、あまり芳しい噂はないといういわくつきの人物だ。
ところが、市兵衛がお彩を継妻として迎えたため、お彩や市兵衛には良い感情は抱いていなかった。良人の武蔵屋徳右衛門というのは大人しい男だが、お知歩は亭主を尻に敷いて、武蔵屋でもしたい放題のやりたい放題で、あまり芳しい噂はないといういわくつきの人物だ。