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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
お彩が裏口から声をかけると、まず下女中が女中頭おしまに知らせに走った。何しろ、二年以上も前に忽然と姿を消したご新造がひょっこりと帰ってきたのだ。女中頭も大慌てで、まずご新造当人かどうか確認するためにやってきた。この女中頭おしまは不幸な死を遂げた先のご新造お市の乳母を務めた経緯があり、お彩を憎んでいた。もし我が身が育てたお嬢さまが生きておわせば、お彩のようなどこの馬の骨とも知れぬ女をご新造と仰ぐこともなかったのにと考えると口惜しくてならないのだ。
急遽駆けつけたおしまが見たところ、お彩は確かに二年前に行く方知れずになったご新造であった。
急遽駆けつけたおしまが見たところ、お彩は確かに二年前に行く方知れずになったご新造であった。