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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
 だが、目下のところ、京屋の奥向きを取り仕切っているのは、武蔵屋の内儀お知歩である。まずは、お知歩に采配を仰がねばならず、おしまは更にお知歩を呼びにいった。
 仮にもご新造を裏口に待たせるわけにもゆかず、お彩は奥向きの小座敷に通された。専ら家族が私的な来客用に使う部屋である。
 四半刻余り待たされた後、漸くお知歩が現れた。襖が開き、衣擦れの音が聞こえる。
 お彩は両手をつかえた。過去は過去、今は、お彩は京屋のご新造でも何でもない。二年も前に勝手に飛び出した我が身が今更、ご新造面をできるとは思ってはいなかった。
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