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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
女中部屋は、京屋の主人やその妻、家族が暮らす棟とはまた違う棟になる。ひと部屋に数人の女中が寝起きする相部屋である。同じ女中でも主やその家族に仕える上女中、雑用を務める下女中と厳然と区別されている。そのすべてを束ねるのが女中頭おしまで、おしまやおみよなどは奉公が長いこともあり、特に専用の個室を与えられていた。
お彩が下女中の一人に案内されて女中部屋に入ってすぐのこと、一人の女が顔を覗かせた。
「おみよさん」
お彩は懐かしさのあまり、それまで抑えていた感情が一挙に吹き出してしまった。その女は、かつてご新造だった頃のお彩付きの上女中おみよであった。
お彩が下女中の一人に案内されて女中部屋に入ってすぐのこと、一人の女が顔を覗かせた。
「おみよさん」
お彩は懐かしさのあまり、それまで抑えていた感情が一挙に吹き出してしまった。その女は、かつてご新造だった頃のお彩付きの上女中おみよであった。