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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
 それは当然の処遇だろう。最初から女中として雇い入れて貰えれば良いと考えていたお彩であった。
「ありがとうございます」
 安堵して手をついたお彩に、お知歩は憎しみのこもった眼を向けた。お彩の眼前で襖が大きな音を立てて閉まり、お知歩は憤懣やるかたないといった表情でその向こうに消えた。
それから女中部屋に案内され、荷物を置きにいった。が、お彩が持参したのは、小さな風呂敷包み一つだけだった。かつてご新造としてここで暮らしていた頃とは雲泥の差だが、いかにせん、お彩は貧乏や不自由には慣れている。元々、裏店で生まれ育った根っからの庶民なのだから。
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