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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
翌朝から、お彩の京屋での日々が始まった。とはいっても、今度は女中としての生活である。幸いにも、お彩は市兵衛の身の回りの世話だけをする上女中になれた。これは、大番頭の佐平が断固としてそうするべきだと言い張ってくれたらしい。二年前には何かと冷たい眼で見て、ろくに相手にもしようとしてくれなかった佐平であったが、意外にもお彩の味方をしてくれたようだった。
その日の朝、お彩は三ヶ月ぶりに市兵衛に対面した。奥の部屋で布団に横たわる市兵衛は、まるで眠っているだけのように見えた。
しかし、顔色は白く、血の気もない。水や重湯は取っているとはいえ、ろくに食事も取ってはいないので、ひと回り以上も痩せて、その美貌がかえって凄絶さを増している。頭に巻かれた白い包帯が痛々しかった。
その日の朝、お彩は三ヶ月ぶりに市兵衛に対面した。奥の部屋で布団に横たわる市兵衛は、まるで眠っているだけのように見えた。
しかし、顔色は白く、血の気もない。水や重湯は取っているとはいえ、ろくに食事も取ってはいないので、ひと回り以上も痩せて、その美貌がかえって凄絶さを増している。頭に巻かれた白い包帯が痛々しかった。