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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
お彩は身体を拭くため、市兵衛の寝間着の帯を緩め、前を開いた。たった三月前、お彩を抱きしめた逞しい腕や胸は筋肉が落ちていた。お彩は涙をこえらながら、盥に汲んだ水に手拭いを浸し、堅く絞ると、ゆっくりと市兵衛の身体を拭いていく。腕から肩、胸と拭いていった時、ふいにお彩は熱いものがこみ上げた。
お彩は市兵衛の胸に顔を伏せて、声を殺して泣いた。確かに心臓は今この瞬間もトクトクと生命の音を刻んでいるというのに、市兵衛は眼を覚ますどころか、身じろぎさえしない。
お彩は市兵衛の胸に顔を伏せて、声を殺して泣いた。確かに心臓は今この瞬間もトクトクと生命の音を刻んでいるというのに、市兵衛は眼を覚ますどころか、身じろぎさえしない。