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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第46章 最終話【睡蓮】 四
 光に近づいているのだと自分でも判った。そして、暗闇の中からふいに抜け出したと思った刹那、市兵衛は光の輪の中に佇んでいた。
 とうとう自分は死んだのだろうか。氷と呼ばれたほど冷えた心を持つ自分が極楽というものにゆけるとは思えなかったけれど、と、我ながら亡者となってまで落ち着いたものだと冷静に考えたときのことだ。
 身体がふわりと軽くなり、持ち上げられたような感覚があった。気が付けば、彼は覚醒していた。
 夜明け間際なのか、わずかな灰色の光が障子を透かして部屋の中に薄く漂っている。重い瞼をゆっくりと開くと、白濁した視界の中のおぼろげな像が次第に明確な形を取り始める。しばらく眼が薄明かりに慣れるのを待つまでの間、彼は天井を眺めていた。
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