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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第46章 最終話【睡蓮】 四
御仏は願いを聞き届けて下されたのだ。
端整な顔がじっとお彩を見つめている。静まり返った湖のような眼は、やはり、“氷”と謳われる京屋市兵衛のものだ。彼がそこにいるだけで、空気が変わる。それが、京屋市兵衛という男なのだ。
もう、大丈夫だと思えば、安堵がひろがってゆく。
―もう二度と、この男(ひと)の傍を離れない。
今、漸く自分は気づいた。この男より大切なものなど、自分にはありはしない。
市兵衛とめぐり逢って、実に七年もの歳月が流れている。その間には、様々なことがあった。取り返しのつかぬ伊勢次の死―。
端整な顔がじっとお彩を見つめている。静まり返った湖のような眼は、やはり、“氷”と謳われる京屋市兵衛のものだ。彼がそこにいるだけで、空気が変わる。それが、京屋市兵衛という男なのだ。
もう、大丈夫だと思えば、安堵がひろがってゆく。
―もう二度と、この男(ひと)の傍を離れない。
今、漸く自分は気づいた。この男より大切なものなど、自分にはありはしない。
市兵衛とめぐり逢って、実に七年もの歳月が流れている。その間には、様々なことがあった。取り返しのつかぬ伊勢次の死―。