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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第46章 最終話【睡蓮】 四
伊勢次のことを忘れたわけではない。一度は、そのために市兵衛の許には永遠に戻ることはできないと思いつめたほどだ。が、それでもなお、お彩の心は市兵衛を強く求め続けた。
市兵衛が瀕死の重傷を負い、生と死の狭間をさまよっていると知った時、矢も楯もたまらず、市兵衛の許に戻ろうと思った。その時、悟ったのだ。たとえ、どれほどの重い罪を犯したとしても、自分の居場所はこの男の傍しかない。お彩の伊勢次への仕打ちがけして許されることがないならば、お彩は伊勢次の死という罪を背負い、心に癒えぬ傷を負ったまま、市兵衛と共に生きてゆこうと決意したのである。罪を忘れ去ることはできないけれど、罪を抱えたまま生きることはできるはずだ。
市兵衛が瀕死の重傷を負い、生と死の狭間をさまよっていると知った時、矢も楯もたまらず、市兵衛の許に戻ろうと思った。その時、悟ったのだ。たとえ、どれほどの重い罪を犯したとしても、自分の居場所はこの男の傍しかない。お彩の伊勢次への仕打ちがけして許されることがないならば、お彩は伊勢次の死という罪を背負い、心に癒えぬ傷を負ったまま、市兵衛と共に生きてゆこうと決意したのである。罪を忘れ去ることはできないけれど、罪を抱えたまま生きることはできるはずだ。