パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第46章 最終話【睡蓮】　四

　自分が役に立つのかどうかは判らなかったけれど、市兵衛自身が言うように、少しでも救いになれるのなら、何も訊かずに寄り添っていたい。
　出逢ってまもない頃、市兵衛が何ゆえ、自分にその身許を隠し続けてきたのかを、お彩は長い間疑問に思ってきた。だが、今ならば、その理由は容易く理解できる。
　市兵衛は長らく助けを求めていた。
　お彩は、市兵衛が抱える闇や孤独から彼を助けたいと思っていたけれど、あのときのお彩にはその大きな秘密―市兵衛の最初の女房の死にまつわる哀しい過去、いや、何よりも市兵衛がゆえなき心の闇を抱えているという事実を受け止めることはできないと感じたのだろう。