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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第1章 第一話―其の壱―
 お彩自身も苦しかったけれど、父もまた同じように辛かっただろう。悩んだ挙げ句、父はお彩の変わり様を、母親を亡くした娘の哀しみのあまりだと結論づけたようだった。それでなくとも、感じやすい多感な年頃の少女のことだ、母親が側にいてやらないのだから、多少は反抗的になったり我が儘になったりしたとしても仕方ない、と、父は父なりにお彩を理解しようと努力していた。
 事実は父の想像の枠をはるかに越えていたのだけれど、父が真実を知るはずもなく、お彩は父に対してますます頑なになっていった。そんなことが一年近くも続いたある日、お彩は突然、身の回りの荷物を少しだけ持って甚平店を出た。当時、お彩は我が身の父への想いが何であるかということに気付こうとしていた。それは―たとえ自分自身であるとしても、絶対に認めたくはないものだった。そう、お彩は実の父にほのかな思慕を抱くようになっていたのだ。
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