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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第46章 最終話【睡蓮】 四
 それから数年後。
 江戸の外れ、随明寺の長い石段を昇ってゆくひと組の家族がいた。
「おとっつぁん、おっかさん、早く、早く。急がないと、先に行っちゃうよ」
 六歳ほどのきれいな女の子がませた口調で言い、石段を駆け上ってゆく。それより少し遅れて、両親らしい男女がゆっくりと昇っていた。
「おい、お美杷、そんなに走ったら、転ぶぞ」
 父親はいかにも大店の主人らしい風格を漂わせているが、その端整な面には優しげな微笑が浮かんでいる。
「おい、お前、大丈夫か」
 と、傍らを歩く女房を振り返るまなざしはは労りと慈しみに溢れていた。
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