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第46章 最終話【睡蓮】　四

　女房は片手に四つくらいの男の子の手を引いている。男の子の顔立ちは母親にそっくりだったが、なかなか利かん気そうだ。
「お姉ちゃん、おいらも行くから、待ってよ」
　しきりに姉の後を追いかけたがるのを、母親がなだめている。
「ね、お父ちゃんは仏さまに何をお願いするの」
　幼い息子があどけない声で問うのに、父親は破顔した。
「そうだな、やっぱり、赤ちゃんが無事に生まれますようにってお願いするかな」
「そうだね、おいらは弟が良いんだ。一緒に遊べるもんね。ね、おっかさん」
　男の子がはしゃいで母親を見上げると、母親が美しい顔をほころばせた。