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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第1章 第一話―其の壱―
 お彩の心は大きく揺れ動いていたのだ。父への想いを胸の奥底に押し込めて、何げなく過ごすあまりの息苦しさに耐えかねて家出をした―というのが真相であった。
 父に逢いたかった。父のあの広い腕に飛び込んで、父の温もりに包まれたかった。でも、所詮、それは叶わぬ願いだった。この邪悪な、道ならぬ気持ちに気付いた今となっては、のこのこと父の前に姿を晒すことなんて、到底できない。
 昔のように、幼い子ども時代のように、父の腕に抱かれてその逞しい胸に頬を押し付けて思いきり甘えることができたなら。
 お彩は両手で顔を覆った。溢れる涙が頬をつたい、雫がころがり落ちる。お彩は声を殺して泣き続けた。
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