パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第8章 第三話　【盈月～満ちてゆく月～】　其の弐　

　突如として、伊勢次がハッとしたような表情になった。
「まさか、お彩ちゃんは、まだあの男のことを」
　伊勢次の窺うような視線を受け止められなくて、お彩は眼を逸らした。何も応えられない。伊勢次の指摘どおり、お彩はあの男に惚れている。日毎に強くなる恋慕の想いは最早、誰にも止めようがないのだ。
「あいつだけは駄目だ。お彩ちゃん、止すんだ」
　伊勢次はムキになったように言った。いつもの伊勢次らしくない態度である。普段の彼なら声を荒げたり押しつけがましい態度を取ったりはしないのだ。
　お彩は、常とは違う伊勢次の様子が怖かった。