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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐
「前にも言ったと思うが、あいつは危険な匂いがする」
切羽詰まった様子で言って、伊勢次はふと我に返ったようだった。お彩がわずかに後ずさって、伊勢次から離れようとしたことに気付いたのかもしれない。
伊勢次は自らを落ち着かせるように不快息を吸った。
「くれぐれも誤解しねえでくれよ。俺は何も嫉妬や妬みだけで―お彩ちゃんを他の男に取られたくない一心でこんなことをいってるんじゃねえんだ。もしお彩ちゃんが全く別の奴に惚れてて、そいつがお彩ちゃんを幸せにしてくれるってえいうのなら、俺は悔しいが、潔く身を退く。でも、あいつはお彩ちゃんを不幸にするのは判ってる。俺は惚れた女がみすみす泣いたり哀しんだりするのが判ってて、黙って見てはいられねえよ」
切羽詰まった様子で言って、伊勢次はふと我に返ったようだった。お彩がわずかに後ずさって、伊勢次から離れようとしたことに気付いたのかもしれない。
伊勢次は自らを落ち着かせるように不快息を吸った。
「くれぐれも誤解しねえでくれよ。俺は何も嫉妬や妬みだけで―お彩ちゃんを他の男に取られたくない一心でこんなことをいってるんじゃねえんだ。もしお彩ちゃんが全く別の奴に惚れてて、そいつがお彩ちゃんを幸せにしてくれるってえいうのなら、俺は悔しいが、潔く身を退く。でも、あいつはお彩ちゃんを不幸にするのは判ってる。俺は惚れた女がみすみす泣いたり哀しんだりするのが判ってて、黙って見てはいられねえよ」