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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐
だが。
真実はあまりにも苛酷であった。父の蒼白な顔が事実を何より物語っている。
―どうして、どうして、私の父親がおとっつぁんじゃなかったの!?
お彩の眼に大粒の涙が溢れた。
「どうして―」
お彩は唇を噛みしめた。あまりに強く噛んだので唇が切れたのか、鉄錆びた味が口中にひろがる。
お彩は伊八の背中に向かって叫んだ。
「どうして黙ってたのよ」
が、伊八の背中はその場に縫い止められたように微動だにしない。
伊八は実の子でもない自分を十七年もの間、慈しみ育ててくれた。父に対して感謝こそすれ、責めるのは筋違いだと思いながらも、お彩は烈しい感情に駆られて父をなじった。
大好きな父の娘ではなかったということは、お彩にそれほどの大きな打撃に与えたのだ。
真実はあまりにも苛酷であった。父の蒼白な顔が事実を何より物語っている。
―どうして、どうして、私の父親がおとっつぁんじゃなかったの!?
お彩の眼に大粒の涙が溢れた。
「どうして―」
お彩は唇を噛みしめた。あまりに強く噛んだので唇が切れたのか、鉄錆びた味が口中にひろがる。
お彩は伊八の背中に向かって叫んだ。
「どうして黙ってたのよ」
が、伊八の背中はその場に縫い止められたように微動だにしない。
伊八は実の子でもない自分を十七年もの間、慈しみ育ててくれた。父に対して感謝こそすれ、責めるのは筋違いだと思いながらも、お彩は烈しい感情に駆られて父をなじった。
大好きな父の娘ではなかったということは、お彩にそれほどの大きな打撃に与えたのだ。