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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐
「何でえ、改まって」
伊八は揶揄するような口調で言い、立ち上がった。
「そろそろ少し休もうと思ってたところなんだ。茶でも淹れるとするか」
「ね、おとっつぁん、私は誰の子なの?」
刹那、伊八の整った貌が強ばるのが判った。
「ば、馬鹿。お前が誰の子だなんて、今更訊くまでもあるめえ。それとも、お彩、お前は父ちゃんをからかってるのか」
伊八は狼狽えながらも、必死に取り繕おうとしている。お彩は父のその反応から、彦七の話がすべて真実であったことを悟った。
―私はおとっつぁんの本当の子では亡かった―。
大きな哀しみが改めて奥底から湧き上がってきた。父に面と向かって訊ねるそのときまで、お彩は一抹の希望を抱いていた。そんな馬鹿な話があるはずはない、お前の父親は俺の他にどこにいっていうんだ―と、笑い飛ばしてくれるはずだと信じていた。
伊八は揶揄するような口調で言い、立ち上がった。
「そろそろ少し休もうと思ってたところなんだ。茶でも淹れるとするか」
「ね、おとっつぁん、私は誰の子なの?」
刹那、伊八の整った貌が強ばるのが判った。
「ば、馬鹿。お前が誰の子だなんて、今更訊くまでもあるめえ。それとも、お彩、お前は父ちゃんをからかってるのか」
伊八は狼狽えながらも、必死に取り繕おうとしている。お彩は父のその反応から、彦七の話がすべて真実であったことを悟った。
―私はおとっつぁんの本当の子では亡かった―。
大きな哀しみが改めて奥底から湧き上がってきた。父に面と向かって訊ねるそのときまで、お彩は一抹の希望を抱いていた。そんな馬鹿な話があるはずはない、お前の父親は俺の他にどこにいっていうんだ―と、笑い飛ばしてくれるはずだと信じていた。