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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐
「お彩」
父はお彩を哀しげな眼で見た。
「所帯を持った時、おっかさんの腹にお前がいることは判らなかったんだ。お前を宿していると判ったのは所帯を持ってからのことだったんだ」
「―!」
お彩は絶句した。
「じゃあ、おとっつぁんは、おっかさんが他の男と深間になってると知らずに所帯を持ったっていうの!? おっかさんは他の男のひととそんな関係にありながら、おとっつぁんと所帯を持ったっていうの?」
それでは、あまりに父が気の毒すぎると思った。お彩の脳裡に母お絹の花のような笑顔が蘇る。ふわりと花がほころぶように微笑む母は、亡くなる間際まで到底三十を過ぎる歳には見えなかった。人が好くてお節介で、自分のことより他人のことばかりにかまけている母だった。そんな母を父は大切にしていたのだ。
父はお彩を哀しげな眼で見た。
「所帯を持った時、おっかさんの腹にお前がいることは判らなかったんだ。お前を宿していると判ったのは所帯を持ってからのことだったんだ」
「―!」
お彩は絶句した。
「じゃあ、おとっつぁんは、おっかさんが他の男と深間になってると知らずに所帯を持ったっていうの!? おっかさんは他の男のひととそんな関係にありながら、おとっつぁんと所帯を持ったっていうの?」
それでは、あまりに父が気の毒すぎると思った。お彩の脳裡に母お絹の花のような笑顔が蘇る。ふわりと花がほころぶように微笑む母は、亡くなる間際まで到底三十を過ぎる歳には見えなかった。人が好くてお節介で、自分のことより他人のことばかりにかまけている母だった。そんな母を父は大切にしていたのだ。