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第8章 第三話　【盈月～満ちてゆく月～】　其の弐　

「おっかさんは手込めにされたのね、そして、おっかさんに狼藉を働いた人でなしが私の父親っていうわけなのね」
　お彩はうわ言のように呟き、震える声で問うた。
「おとっつぁんは、おっかさんが乱暴されたことは知ってたの？」
　伊八は静かに頷いた。
「ああ、元はと言やぁ、俺がおっかさんを待たせすぎちまったから、あんなことになっちまったんだ。もちろん、お絹はそんなことがあって自分から身を退こうとしたけど、俺の気持ちは変わらなかった。あれは不幸な事故だった。お絹は事故に巻き込まれただけで、あいつが悪いんじゃねえ。だが、その時、俺たちはお前がおっかさんの腹に宿ってることは知らなかった」
「何があっても、おとっつぁんの気持ちは変わらなかったのね」
　お彩は、父がいかほど母を愛し大切にしていたかを今更ながらに知った。