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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐 
 やがて、男の貌が近付き、お彩の唇をそっと掠めた。まるで鳥の羽でそっと撫でられたような、かすかな感触に、お彩の全身が反応する。二人は間近で見つめ合った。男が再び近付いてくる。
 二度目の口づけは先刻のものとは異なり、貪るように深く烈しいものであった。わずかに開いたお彩の口に男の舌が侵入しする。初めの経験に、お彩の中で小さな官能の花が開いた。男に触れられることへの本能的な恐怖はあったけれど、その中には逆らいがたい欲求―男とずっとこうして触れ合っていたいという原始的な感情も存在していた。
 お彩は我が身の男への恋情が最早消すこともできない劫火のごとく燃え盛るのを認めないわけにはゆかなかった。
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