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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐 
 あまりにも烈しい愛は時に情熱を呼び起こし、その焔に包まれた人間はその想いに溺れ―火に灼き尽くされ身を滅ぼすことになる。自分の男に対する想いはあまりにも深すぎる。そんな愛し方は互いに相手を滅ぼしてしまう両刃の剣、破滅的な愛に他ならない。
―あの男は危険だ。お彩ちゃんをいつか必ず不幸にする。
 二日前の伊勢次の言葉がまだ耳に残っている。あの不吉な予言めいた台詞はあの夜以来、耳から離れなかった。
 伊勢次の言葉はある意味、的を得てはいる。上等の着物を粋に着こなした男はどこから見ても裕福な商人に見えるが、その人離れした美貌には常に悲運を想わせる底知れぬ憂愁の翳のようなものが滲み出ている。男が背負う翳りを見て、伊勢次は近付かない方が良いと言うのだろう。
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