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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐 
 時折見せる屈託ない表情とは裏腹にその美しい眼(まなこ)に宿る救いようのないほどの孤独。
 男はお彩に「哀しそうな顔をしている」と言うが、男の方こそがお彩には壮絶な孤独とたった一人で闘っているように見えた。その翳りゆえにお彩はよりいっそう男に魅せられてゆくのだ。
 そして、お彩にはある予感があった。互いに自分自身を抑制し合いながらも、自分たちが次第にわずかずつその距離を近付けていっていることを、お彩は自覚していた。この男と自分は明らかに惹かれ合っている。
「済まねえ」
 長い口づけの後、男が少し照れたような笑みを浮かべた。こうして見ると、年相応の若々しさが溢れている。男の孤独の翳が一体何に根ざしているものなのかを、お彩は知りたいと思った。
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