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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一
 父との関係について懊悩するお彩に、男は言った。
―私が自分の娘に好きだと言われりゃあ、嬉しいね。手前の娘に惚れられるとは、お前さんのおとっつぁんはよほどの良い男なんだろうよ。
 そのひと言でお彩の心はどれだけ救われたかしれない。やがて、お彩は父と家を出て以来二年ぶりに心から打ち解けて話すことができた。その頃には、お彩自身にも父への気持ちは思春期特有の憧れがたまたま父に向いたにすぎなかったことを認められるようになっていた。
 父への想いが春の淡雪のように儚いものだったと気付いたときは、お彩の男への想いが真実であることを知る瞬間でもあった。不思議なことに、男はいつもお彩が何らかの悩みや困難に直面しているときに現れ、適切な助言を与え相談に乗ってくれる。
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