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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一
「小巻の奴、どうも偉兵衛さんとうまくいってないようなんだ。まァ、あいつの性格から考えりゃア、これまで偉兵衛さんが辛抱してくれていたのをありがてえと考えなきゃならねえんだろうが」
喜六郎がそれから、訥々と語った。
小巻の亭主偉兵衛はその水際立った男ぶりから、小巻と所帯を持つ前から女性にもてた。もちろん、吉原(なか)にも独身時代から繁く通っていて、深間になった女郎の一人二人はいたらしい。が、小巻にひとめ惚れしてからというもの、遊廓通いからも遠ざかっていて、小巻ひと筋であったはずだった。
ところが、小巻が身重の身体となり出産のため里帰りしている間、偉兵衛はまた、昔の良からぬ癖が出て、吉原に足を向けるようになった。やはり、元来、遊び人で鳴らした男が半年近くも女っ気なしというのはこたえたようだ。
喜六郎がそれから、訥々と語った。
小巻の亭主偉兵衛はその水際立った男ぶりから、小巻と所帯を持つ前から女性にもてた。もちろん、吉原(なか)にも独身時代から繁く通っていて、深間になった女郎の一人二人はいたらしい。が、小巻にひとめ惚れしてからというもの、遊廓通いからも遠ざかっていて、小巻ひと筋であったはずだった。
ところが、小巻が身重の身体となり出産のため里帰りしている間、偉兵衛はまた、昔の良からぬ癖が出て、吉原に足を向けるようになった。やはり、元来、遊び人で鳴らした男が半年近くも女っ気なしというのはこたえたようだ。