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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
その二日後。お彩は「花がすみ」からもほど近い随明寺に詣でた。昼下がりのことで、店の方も客足が途絶える時間だから、喜六郎も快く休みををくれた。
随明寺は黄檗宗の名刹で開基は浄徳大和尚。時の帝からも紫衣を許され、大師号を賜るほどの高僧であったが、常に市井にあって衆生と共にあることを望み、布教に一生を捧げた人であった。
栄誉ある大師号も辞退し、飢饉のときは自ら町に出て炊き出しに当たり、疫病が蔓延した際は感染する怖れがあるのも厭わなかった。病に倒れ喘ぎ苦しむ人々の看護に従事、亡くなった人々の亡骸を一カ所に集め、荼毘に付して経を唱え続けた。
今でも月に一度の浄徳大和尚の命日には露店が広い境内に立ち並び、善男善女で賑わう。
随明寺は黄檗宗の名刹で開基は浄徳大和尚。時の帝からも紫衣を許され、大師号を賜るほどの高僧であったが、常に市井にあって衆生と共にあることを望み、布教に一生を捧げた人であった。
栄誉ある大師号も辞退し、飢饉のときは自ら町に出て炊き出しに当たり、疫病が蔓延した際は感染する怖れがあるのも厭わなかった。病に倒れ喘ぎ苦しむ人々の看護に従事、亡くなった人々の亡骸を一カ所に集め、荼毘に付して経を唱え続けた。
今でも月に一度の浄徳大和尚の命日には露店が広い境内に立ち並び、善男善女で賑わう。