この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
その日もお彩は出合茶屋界隈に差しかかると、いっそう脚を速めてその前を通り過ぎようとした。その時、突如として背後から肩を強く掴まれ、お彩は身を強ばらせた。
恐る恐る振り向くと、何と眼の前にいたのは小巻の良人偉兵衛であった。
「あなたは―」
愕きのあまり声もないお彩を見て、偉兵衛は薄く笑った。
「こんなところで出逢うとはまた、奇遇だねえ」
刹那、お彩の中で警鐘が鳴った。
二日前に見たこの男は、いかにも好色そうな浮ついた雰囲気ではあったが、危うさはなかった。だが、今の偉兵衛の顔には邪悪なものが感じられた。こんな状態の男には近付かない方が良いと、お彩の本能が告げていた。
お彩は知らず後ろに後ずさった。偉兵衛が口許を歪める。
恐る恐る振り向くと、何と眼の前にいたのは小巻の良人偉兵衛であった。
「あなたは―」
愕きのあまり声もないお彩を見て、偉兵衛は薄く笑った。
「こんなところで出逢うとはまた、奇遇だねえ」
刹那、お彩の中で警鐘が鳴った。
二日前に見たこの男は、いかにも好色そうな浮ついた雰囲気ではあったが、危うさはなかった。だが、今の偉兵衛の顔には邪悪なものが感じられた。こんな状態の男には近付かない方が良いと、お彩の本能が告げていた。
お彩は知らず後ろに後ずさった。偉兵衛が口許を歪める。