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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第10章 第三話 【ほたる草】 其の弐
偉兵衛が海産物問屋の内儀と深間になっていると苦々しげに話していた喜六郎の言葉が咄嗟にお彩の中をよぎった。
相手の女に逃げられてよほど腹が立っているのか、二日前の若旦那然とした様子はおよそ感じられず、ただ凶暴な殺気めいたものが偉兵衛を取り巻いていた。
「や―」
お彩は掠れた声を上げた。
恐怖のあまり、助けを求める声、悲鳴さえ出ない。邪な色に顔をどすぐろく染めて迫ってくる男がたいそう怖かった。
「一緒に来るんだ、その様子じゃあ、大方男のことは何も知っちゃいねえんだろう? 俺が可愛がって教えてやるさ。その中(うち)、この世の法楽というものを寝間の中で見せてやるぜ」
相手の女に逃げられてよほど腹が立っているのか、二日前の若旦那然とした様子はおよそ感じられず、ただ凶暴な殺気めいたものが偉兵衛を取り巻いていた。
「や―」
お彩は掠れた声を上げた。
恐怖のあまり、助けを求める声、悲鳴さえ出ない。邪な色に顔をどすぐろく染めて迫ってくる男がたいそう怖かった。
「一緒に来るんだ、その様子じゃあ、大方男のことは何も知っちゃいねえんだろう? 俺が可愛がって教えてやるさ。その中(うち)、この世の法楽というものを寝間の中で見せてやるぜ」