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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-
―其の弐―

 その日は昼過ぎから突如として雨が降り出した。朝から陰鬱な空が江戸の町の上にひろがっている肌寒い一日だった。
 霜月も下旬となり、江戸はひと雨毎に冬に近付いてゆくようだ。随明寺の紅葉も紅く染め上がっていた葉を落とし始め、真冬への準備を着々と進めている。空と空気は日毎に透明感を増していたが、それは迫りくる冬の足音を聞いているようだった。
 お彩は昔から冬が苦手だ。何故かはしかとは判らないが、冬特有のあの薄青い寒走った空を見ていると、やるせない淋しさを感じるのだ。もうすぐ、お彩の嫌いな冬がやって来る。そのことがまた余計にお彩の心を重くさせていた。
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