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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第11章 第三 【ほたる草】 其の参
【其の参】

 「花がすみ」の前まで歩いてきたときのことである。その日も朝からねっとりとした大気が肌にまとわりつくような真夏日とあり、少し歩いただけでも汗びっしょりになり、お彩は額から流れ落ちる汗をそっと片手でぬぐった。
 と、小巻が店の前にうずくまっているのが遠目に見えた。敬次郎は二階で眠っているのか、姿は見えない。
「小巻さん?」
 お彩は不安になって足早に歩いた。小巻が弾かれたように顔を上げる。その表情を見た刹那、お彩はハッと胸を衝かれた。美しい貌が涙で濡れていたのだ。
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