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第11章 第三　【ほたる草】　其の参

「おい、待てよ。小巻」
　偉兵衛は小巻の開き直りに流石に仰天したらしく、泡を食った様子で小巻の機嫌を取るように言った。
「これでも、今日は迎えに来たんだぜ。この―お彩さんの良い男に殴られて、まァ、今度ばかりは、ちったァ、遊びが過ぎたかなと思って、反省したんだ。吉原(なか)の喜久乃ともきれいさっぱり切れるから、頼むから、このとおり、うちに戻ってくれよ。お袋も敬次郎に逢いたがってるぜ」
　両手で拝む仕草をしてみせるが、この男、どうも今一つ実がないというのか、真実味がない。それでも、今はこの男なりに小巻ともう一度やり直そうという気になっていることだけはお彩にも判った。
　だが、小巻はツンと顎をそらし、そっぽを向いている。