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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】  其の壱
 色白のほっそりとした美人であったが、どこか影の薄いというのか、目立たない雰囲気だった。女の脇には三つほどの男の子がちょこんと立っていて、その面差しから女の倅であろうことは容易に想像がついた。
「いらっしゃいませ」
 お彩はもう既に身に馴染んだ愛想笑いを浮かべ、明るい声音で応じた。
 女の貌に弱々しい微笑が刻まれた。
「いえ、申し訳ござんせんが、私は客ではありません。先ほども申し上げましたように、こちらの旦那さんにご用があって参りました者です」
「旦那さんにご用ですか」
 お彩は呟くと、そっと板場の奧を窺った。中にいる喜六郎に今のやり取りは聞こえなかったしても、客の訪れは判ったはずだ。
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