パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第14章 第六話　【春の雨】　　其の壱

　もしかしたら面と向かって断れば、これまでのように伊勢次と付き合ってゆくことはできないかもしれない。何でも打ち明けて話せる兄のような慕わしい存在である伊勢次を失いたくない。伊勢次を傷つけたくないと思い中には、そんな身勝手な願いがなかったとはいえない。だからこそ、これまではっきりとした返事ができないでいたのだ。
　が、それは所詮、お彩の手前勝手な我が儘であり、許されるべきことではない。そのこともお彩はよく心得ていた。たとえ伊勢次からどのように手酷い言葉を聞くことになったとしても、これまでのように屈託なく話ができなくなったとしても、そろそろきちんとした返事をする潮時だと考えている。