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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】  其の弐
 お彩は今、大池のほとりに佇み、その眼幅としか表現できない光景を欲しいままに眺めていた。大池は名の通り、巨大な池であり、今を盛りと咲き誇る花々を澄んだ水面が映し出している。時折跳ねる錦鯉がその静寂を破り、水面に新たな模様を描いた。かと思えば、気紛れな風が水面をそっと撫でてゆく。そんな微妙に変わりゆく水の風景を見ているだけでも、いくばくかは心が癒されるような気がした。
 大池の周囲には流石にこの時季は大勢の人々がいて、殊に桜花の下ではたくさんの人が憩い、思い思いに満開の花を愛で存分に楽しんでいる。普段であれば、月に一度の縁日以外はひっそりとしているのだけれど、この時分だけは例外なのだ。
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