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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】  其の弐
 月のように清らかな、それでいて、夜陰にひっそりと浮かび上がる桜のように艶やかな美貌がすぐ眼の前にある。互いの息遣いさえ聞こえるほどの近くに、あれほど恋焦がれた男の貌が迫っていた。
「済まなかった。商いの方が忙しくてな。どうしているのかと気にはしていたのだが」
 陽太のその美しい貌には心底済まなさそうな表情が浮かんでいる。だが、お彩は言わずにはおれなかった。
「それって、まるで女に飽きた男が言い訳にするような台詞だわ」
「―!」
 陽太の切れ長の双眸がお彩を射るように見開かれた。
「お前さんは、その台詞を心から言ってるのか」
 お彩は陽太の腕の中から身をよじって離れた。
「私の正直な感想よ」
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