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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】  其の弐
 お彩の頬が染まった。恥ずかしさに身も世もない心地で、その場から姿を隠してしまたいと本気で思ったほどだった。陽太がそっとお彩の手を掴んだ。
「行こう。あまり人目に立たねえ方が良い」
 陽太に手を引かれ、お彩は歩いた。いや、歩いたというよりは半ば引きずられていたと言った方が良いかもしれない。
 浄徳大和尚を祀る奥ノ院の前を過ぎ、絵馬堂まで来た時、ふいに陽太が止まった。
 弾みで、お彩が前方へつんのめろうとするのを脇から抱き止めてやりながら、陽太が言った。
「済まねえ」
 お彩の眼には、まだうっすらと涙が滲んでいた。陽太が人さし指でそっとその雫をぬぐい取った。
「あんな大勢の人の中で、するべきことじゃなかった。私としたことが、血気に逸ったガキのようなことをしちまった」
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