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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】  其の弐
 恐怖と嫌悪の中にわずかに混ざった歓び、それはお彩がいまだ知らぬ官能を呼び覚ますものだった。その未知の感覚が目ざめさせられることに、本能的な恐怖を感じずにはおれなかった。
 陽太の熱い唇がゆっくりと降りてきて、お彩のうなじを辿る。その大きな手のひらがそっと着物の上から胸の膨らみを包み込んだ時、お彩は反射的に陽太から飛びすさって離れた。
「いやっ」
 お彩はハッと我に返って、陽太を見た。
 周囲の花見客の中には好奇の眼で二人を見ている者も少なくはなかった。昼日中から衆目の中で烈しい接吻と抱擁をすれば、嫌でも他人の眼が集まろうというものだ。それも誰もが眼をそばだてるような美男と美少女の取り合わせとあれば、余計に好奇の視線に晒されるのは当然といえば当然であった。
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