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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐
お彩はその真摯な眼に向かって、心の中で応えていた。
―私はこの男についてゆきます。
と。
「それじゃあ、俺はやっぱり、お彩ちゃんを諦めるわけにはいかねえな」
伊勢次は捨て台詞とも思える言葉だけを残し、降りしきる雨の中を去っていった。
得体の知れぬ哀しみがお彩を包み込んだ。
涙が後から後から溢れ出る。だが、頬をつたい落ちるのが雨なのか涙なのか、お彩は自分分でも判らない。
突如としてふわりと逞しい腕に抱きしめられ、お彩はそっと陽太の広いに胸に頬を押し当てた。今はただ、恋しい男の腕の中にいられたら、陽太の傍にいられたなら、ただそれだけで良い。
お彩はそのひと刹那のささやかな満足に我を忘れようとした。
―私はこの男についてゆきます。
と。
「それじゃあ、俺はやっぱり、お彩ちゃんを諦めるわけにはいかねえな」
伊勢次は捨て台詞とも思える言葉だけを残し、降りしきる雨の中を去っていった。
得体の知れぬ哀しみがお彩を包み込んだ。
涙が後から後から溢れ出る。だが、頬をつたい落ちるのが雨なのか涙なのか、お彩は自分分でも判らない。
突如としてふわりと逞しい腕に抱きしめられ、お彩はそっと陽太の広いに胸に頬を押し当てた。今はただ、恋しい男の腕の中にいられたら、陽太の傍にいられたなら、ただそれだけで良い。
お彩はそのひと刹那のささやかな満足に我を忘れようとした。