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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐
 父伊八に打ち明けたとて、先行きに見込みはない恋だと言われるだろう。
 いや、大切な娘がそんな風に扱われていると知れば、生真面目な父のことだから、陽太の素性を突き止めて殴り込みにでもいくかもしれない。
 そろそろ潮時だと思った。いつまでも姿を現さぬ男をずっと待ち続けるつもりがないのであれば、父の言うように、新たに生きる道を探すべきだろう。陽太があの大店京屋の主人だと知ってしまった今、なおのこと、お彩の片恋が成就する可能性は薄くなった。市兵衛に女房や子どもがいるかどうまでは知らないけれど、歳の頃やその立場から考え合わせれば、所帯を持っていると考えた方が良い。万が一独り身だとしても、お彩のようなその日暮らしの長屋住まいの娘と大店の主人とでは土台住む世界が違う。
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