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第19章 第八話　　【椿の宿】

　そう、自分たちは同質のものをその奥底に抱え持つ人間だ。判りやすくいえば、孤独な魂を持つ者同士とでもいえるだろうか。ゆえに、市兵衛とお彩がこんなにも深く烈しく求め合い、ついには結ばれたのに相違なかった。魂の奥底から呼び合い、求め合っていたからこそ、その運命(さだめ)には抗いようもなかったのかもしれない。お彩はもうずっと以前から、そのことに気づいていた。
　それなのに、こうして、ぴったりと膚を寄り添わせたばかりの今、かえって、以前より市兵衛を遠くに感じるような気がしてならない。
　市兵衛がお彩を有無を言わせぬ様子で引き寄せた。市兵衛の裸の逞しい胸に頬をすり寄せると、かすかな鼓動が聞こえてくる。