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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話  【椿の宿】 其の弐
伊勢次は手でお彩の言葉を遮った。
「いや、最後までとにかく聞いてくれ。お前があの野郎に惚れているというのなら、俺はそれを見守ることにした。お前がそれで幸せだというのなら、俺はそれで良い。つまらねえ意地を張って、これまでのお彩ちゃんとの付き合いを全部、無駄にするようなことは、それこそ馬鹿げたことだと思ったのさ」
 伊勢次はひと息に言ってのけると、スと手を差し出した。
「これは仲直りの―」
 言いかけて、首をひねる。
「いや、仲直りっていうのも妙だな、別に喧嘩をしたガキでもねえしな」
 そして、満面の笑みを湛えた顔で言った。
「マ、何でも良いや。とりあえず、これからもよろしくな」
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