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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話  【椿の宿】 其の弐
 その明るい笑顔に、お彩の眼に熱いものが湧いた。これが一年もの間、求婚の返事もせず、その上、伊勢次の言葉に耳を傾けようともしなかった女への台詞なのだ!
 お彩の手をふわりと温かい手のぬくもりが包み込む。そこから流れ込んでくるのは、お彩が幼い頃に繋いだ父伊八の手の感触にも似て、男と女とかそういった色恋などとは拘わりのない、温かな感情であった。
 やがて、伊勢次はあっさりと手を放した。
 お彩は様々な想いが一挙に溢れ出してきて、たまらず両手で顔を覆った。謝るなと伊勢次が言うのであれば、これは礼を言うしかなさそうだ。お彩はしゃくり上げながら言った。
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