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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第3章 第一話-其の参-
「―」
 お彩は咄嗟に応えられなかった。その問いこそ、お彩が当の男その人にぶつけてみたいと思っていたからだ。
「私が哀しそうにしている?」
お彩が呟くと、男は頷いた。
「ええ、私にはそのように見えますよ」
 お彩は何か言いかけて口をつぐんだ。この男について、お彩は何も知らない。住む場所も名前さえも、どのような身分なのかも。そんな人間に自分の心の内を洗いざらいぶちまけるなんて、正気の沙汰ではない。しかし、逆に知らない他人に対してだからこそ、何もかもを話せるような気がしていた。
「私には好きな男(ひと)がいます」
 思い切って、ひと息に言う。
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