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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱
「慶竹先生の診立てでは、今夜が山だっていうことだ。どうやら頭を強くぶつけたらしくって、こればかりは、どうにも手の施しようがねえと」
 茂助がいっそう声を低めた。
「そんな―」
 お彩は言葉を失った。
 虚ろなまなざしを父に向けると、父はただ眠っているだけのように見えた。頭にもどこにも目立った怪我どころか、傷一つない。
「ね、おじさん。嘘でしょ。おとっつぁんのどこにもそんな生命取りになるような傷なんてないじゃない。頭だって、きれいよ。どこからも血だって、出てないのよ。私には、おとっつぁんがそんな深刻な状態には見えないの」
「お彩ちゃん」
 茂助が胸を衝かれたような表情になった。
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