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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
 ゆめや小文(こふみ)の美しい貌には淋しげな翳りが落ちていて、それがまたいっそう儚げな彩りを添えている。
「この度はお父様のご不幸、心よりお悔やみ申します」
 澄んだ声音で言われ、お彩は軽く頭を下げた。
「ご丁寧に恐れ入ります」
「あの、ここでは人眼もありますから、どうぞお入りになって下さい」
 お彩が勧めても、小文はゆるりと首を振った。
「すぐにお暇いたします。今日は、これをお渡ししたいと思いまして、お伺いしました」
 小文が懐から取り出したのは、桔梗の花を象った簪であった。
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