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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
 市兵衛はわざとお彩にこの場で求婚をしている。先に女房にして欲しいと言ったお彩にこれ以上恥ずかしい想いをさせぬようにとの彼なりの配慮であった。
「はい」
 お彩はか細い声で、しかし、はっきりと応えた。
 市兵衛とお彩の視線が交わる。
 これ以上の言葉は要らない。二人は互いのまなざしの奧に言葉以上の確かなものを確かめ合った。
 静かな秋の風が池の水面をそっと撫で、通り過ぎていった。池は朱色に染まった鮮やかな葉を映し出している。その華やかな色に染まった水面を、二羽のつがいの水鳥が寄り添うようにして泳いでいった。
 夢にまで見た男の腕の中で、お彩は新たな涙を流した。

 【第九話 夫婦(めおと)鳥 了  】


  次回から第十話へ!
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