この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱
京屋の主人は当主の座につくと同時に「市兵衛」を名乗る。当代の市兵衛もそれまでは陽太という名を持っていた。お彩は市兵衛が京屋の主人であると知るまで、陽太という名を教えられていた。
六代目市兵衛は鋳掛け屋の倅であり、父親のように一生貧乏で終わるのがいやで、十歳で奉公に出たのである。丁稚として京屋に入った陽太はその聡明さや陰陽なたない働きぶりを五代目市兵衛に気に入られた。また陽太がまたとない美男であっこともあり、五代目市兵衛の長女お市が陽太にほのかな恋心を持つようになった。
六代目市兵衛は鋳掛け屋の倅であり、父親のように一生貧乏で終わるのがいやで、十歳で奉公に出たのである。丁稚として京屋に入った陽太はその聡明さや陰陽なたない働きぶりを五代目市兵衛に気に入られた。また陽太がまたとない美男であっこともあり、五代目市兵衛の長女お市が陽太にほのかな恋心を持つようになった。