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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第24章 第十話 【宵の花】  其の弐
 ゆえに、お彩に月のものが一度もないことも心得ていても不思議はない。むしろ、そのことに今まで気付かなかった自分が迂闊すぎたのだ。
 しかし、身籠もったかもしれないと思っても、何故か歓びよりも哀しみの方が大きかった。市兵衛の今朝方の仕打ち―吉原で女郎と一夜を過ごしたすぐ後で、まるで手込めのように乱暴にお彩を抱いた―を思い出すと、泣きたくなった。市兵衛の心を信じられない今、身籠もったとすれば、果たして、それを素直に歓んで良いものだろうか。
「男の方は、とかくそのようなことには疎くていらっしゃいますから。たとえ旦那様とて、その点だけは、やはり内儀さんの方からお話して差し上げねばなりませんでしょう。そのためにも一日も早くお医者様に診て頂いた方がよろしうございます。旦那様にとっも初めてのお子様ですもの、きっと、お歓びになられますよ」
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